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the Society for the Study of Image & Gender November 2016
“Representation of the pregnant body -Whether the body is Whose?”
17th September 2016 13:00-18:00
at room 8501, the 8th building, Musashi University
このミニ・シンポジウムでは、菅実花氏の作品からインスパイアされ、身体・生殖・表象というキーワードで「孕む身体表象」について各論を提示するとともに、リプロダクションをめぐる表象の政治について議論を行います。
In the spring 2016, at the graduation exhibit of Tokyo University of the Arts, a series of ”Do Lovedoll Dream of Babies?” which was Mika Kan’s work made huge sensation. The love doll is a doll but not for girls. it is a female body as a sexual object but not possible pregnancy. The impact that a love doll would be pregnant betrays the history of pregnancy and birth which is controlled under the power of nation, it might be threat to machismo on the art by gender politics. This mini symposium is inspired by Mika Kan’s work, and presented with key words as body・generation・figure, moreover we will discuss over the political representation over the reproduction.
16:15~17:45ディスカッション(登壇者+コメンテーター+会場)
○コメンテーター
香川檀(武蔵大学教員)
○司会
山崎明子(奈良女子大学教員)
【各論概要】
菅実花(東京芸術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻博士後期課程)
「未来の母としての「妊娠するアンドロイド」をめぐって」
人類は古代より「人間を作り出したい」という欲求を抱いてきた。そこで生まれた発想は「人間の姿に似せた人工物を作り出す方法」と「人間の細胞を使って生命を生み出す方法」とに大別される。いわゆる人造人間を作り出す神話や人形に命が宿るという物語は紀元前から世界各地で見られ、現在では人工知能を搭載したアンドロイド・ロボットの開発が進められている。高度生殖医療の分野では生命をより高度にコントロールする遺伝子操作の技術が日々研究され、人工子宮によって女性の身体を介さずに新たな生命を生み出すことも可能となりつつある。そしてこれら最先端科学における様々な試みは、人工知能と人工子宮を搭載した「妊娠するアンドロイド」の誕生を予見させる。「人間の姿に似せた人工物」が「人間の細胞を使って生命を生み出す」アンドロイド、それは「体外受精」「代理母」「デザイナーベイビー」などの生殖をめぐる新たな選択肢に直面する今日の私たちに「未来の母」の在り方を問いかける存在なのである。
From the ancient time , mankind has been desiring “how to create a human”
吉良智子(東洋英和女学院大学他非常勤講師)
「「あるべき」女児用人形とは何か――「妊娠」した女児用人形をめぐって」
今日、人形は女児に属する玩具とされているが、そのような概念は日本の近代化(ジェンダー化)によってもたらされた。「ままごと」などを通じて女児用人形は「良妻賢母教育」に使われてきた。女児たちが主に使用した人形は、「乳幼児的身体」でもって表わされ「妊娠」に結びつくような身体ではなかった。戦後、ソフトビニールやプラスチックなどの新素材を使用し、工場で大量生産された人形が開発された。特にティーンエイジャーを対象としたファッションドール(バービー人形、リカちゃん人形など)はセクシーな身体で作られた。成熟した女性身体をもつファッションドールは、「妊娠」可能な身体を所有しているともいえる。それらのファッションドールからは「妊娠」した人形も発売された。「マタニティドール」のさきがけである「マミー人形」(ハスブロ社製)、続く「ティーン・プリグナンシー・バービー」(マテル社製)、「妊娠した」日本のリカちゃん人形(タカラ製)などを取り上げながら、これらの「マタニティドール」に対する社会的評価を分析し、あるべき「女児用人形」とは何かを考察したい。
池川玲子(実践女子大他非常勤講師・大阪経済法科大学客員研究員)
「謎の胎盤人形――見世物と医学のはざま」
四半世紀も前のこと、「お産」関係の小さなミュージアムで、「胎盤人形」と名付けられた不思議な人形と出会った。体長約八〇センチの裸体の妊婦。束髪。空洞になった腹部には、もともと胎盤模型と胎児の人形が収められていたという。その後の調査で、同種の人形がいくつかの博物館に収蔵されていること、制作時期は明治中期から末期と推定されていること、そして産科学の教育現場で使われていた「ファントム」という医学模型である可能性が高いこと等が明らかになってきた。とはいえ、製作者などは、いまだに謎に包まれている。
調査の中間報告となる本発表では、この「胎盤人形」について、
①西洋医学で18世紀から使用されてきた、Obstetrician Phantom との関連
②江戸末期から明治初期に流行した「生き人形」との関係
③「産婆」養成課程における近代化とジェンダー化
の三点から検討する。
藤木直実(日本女子大学他非常勤講師)
「「妊娠」を奪取する――女性作家による「妊娠」表象を読む」
周知のように斎藤美奈子の出世作『妊娠小説』(1994)は、「望まない妊娠」という主題をめぐる文学史の体裁を採るが、同書の主張は次の2点に集約されるように思う。すなわち、「妊娠」という主題が男性作家によって「発見」されたということ、および、法制度と表象との関連性の指摘である。
後者については、三度の「妊娠小説ブーム」と、その指標としての①堕胎罪完成、②優生保護法による堕胎の一部解禁、③ピル解禁要求運動という歴史的出来事が示されている。その最初の「ブーム」(1910年前後)と同時期に登場した女性作家たちによる「妊娠」にかかわる表現をめぐっては、斎藤の見取り図に、文学史、女性史、性言説史などにおけるエポックを重ね合わせて、かつて論じたことがある(「孕む身体」『イメージ&ジェンダー』vol.4,2003)。
そこでの議論を踏まえ、本発表では現代文学までを射程に入れて、中沢けい、金井美恵子、倉橋由美子、三枝和子、小川洋子、内田春菊、村田沙耶香などの表現を参照しつつ、女性作家(表現者)による「妊娠」表象の戦略性や攪乱性について考えたい。